[In the maze]
空を飛ぶことも、馬よりも速く進むことも適わなかったころの昔の話。
西に、武力でもって国土を広げ栄える国と、東に、国土の広さは遥か及ばぬが、
地の利と団結力でもって50年、互いに2代王が替わったのちも
その侵略に抗う国があった。
その地の利とは、両国をつなぐ急峻な山に挟まれた谷。
東国はそこに巨大な壁、「関」を築き、兵馬の進入を防いだのだ。
しかし、その50年の経過のうちに、西国の侵攻の他にも新たな危機が生まれる。
それは、金属、特に鉄の不足。武器、防具の整備が日毎に蝕まれ、
西国は東国の兵が裸になるのを待っていた。
そこで東国の王は、兵、民と共に、「関」の後方に岩壁、土壁を築き、
ある位置では空け、ある位置では囲み、ある位置では塞ぐ、
「迷路」を築き上げたのだった。
その途中にも執拗に西国は関を越えようと挑むが、ついに、
その迷路を越える西国の兵は現れることはなかった。
それから、200年の時が経った。
暴威を振るった西国は、相次ぐ地方の反乱を収めることができずついに崩壊。
小国が分立することとなった。
その中の最も西の果ての国に、旅を志す少女が現れた。
古今の地図を携えて、街道を、河を、時間が醸した荒れた道を超え、
東へ東へと道を進め、地図を書き改めていた。
その旅が進むにつれ、彼女がまだ書き改めていない地図が減っていく。
背嚢の奥にしまっていた最後の地図を初めて開いたとき、彼女は驚いた。
地図の右半分がなにも書かれていなかったのだ。
左半分には、左端には見覚えのある道、山を示す2つの線は、上下の
端から右に進むにつれ中央に近づき、その交点には「関」の門があった。
門の鍵は質の悪い鉄製でひどく錆付いており、彼女の力でも、ハンマーのひと叩きで壊れた。
門の開くといきなり壁、しかし右の一方だけ道がある。馬も通れぬ狭さだ。
まっすぐのようで、少しずつ左へ曲がっている。外の陽光より、ランプの
光が頼りになったころ、十字路が見えた。
ここから彼女の、これまで受けた中でも最も困難な、地図の記述が始まる。
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などというバックストーリーを、絵を描いてから考えました。